とりあえず着替えに部室に向かおう。




こんな格好でいるからジロジロ見られるんだろぅしね。










「失礼しまぁす。」










私は部室の鍵を取りに事務室へと向かった。



事務室に入って左側。



いつも鍵が掛けてある場所にテニス部の鍵だけ無い。






「あらさん。どうしたの?」




「あ。すみません。テニス部の部室の鍵知りませんか??」




「それならさっき誰か持っていったわよ。」






そう答える事務員の長谷川さん。



私は長谷川さんにお礼を言い事務室を後にした。



































部室に向かうのに裏庭を通る。






すると、1年生の女の子2人が端にあるベンチに座って缶ジュースを片手に休憩していた。




その時聞こえてきた話の内容に思わず立ち止まってしまった。


































「ねぇ。この前部活の先輩に聞いたんだけど、ウチの学校にジンクスがあるんだってぇ。」














・・・まさかジンクスって、さっき監督が言ってた・・・。








盗み聞きなんて駄目だとは思うけど、気になって足が動かない。



自分と葛藤してても彼女たちの会話は進んでいく。






「えっ?知らなぁい。」






「あのね。文化祭終わると後夜祭で打ち上げ花火をやるんだけど。」







































「花火が上がってる間に好きな人とキスすると両想いになれるんだってぇ♪」


























・・・聞いてしまった。



監督が言おうとしてた事の続き。



そう言うことだったんだ。














何も聞かなかったかのように再び部室へ足を運ぶ。




でも心臓は嘘をつかない。




話を聞いてから鼓動が大きくなってる。















私の好きな人。



でも、相手は絶対好きになっちゃいけない人。



そんなジンクス信じちゃいけない。







そう自分に言い聞かせる。



































部室棟に行く前、テニスコートの方角に足を運んだ。









パコーン


ポコーン









聞き間違える訳無い。



この音はテニスの壁打ちの音。




私は校舎の陰から誰が居るのか覗いた。






「・・・はぁはぁ。クソッ!!」






そこにいるのはクロちゃんだった。



大量の汗を流し、傷だらけになってる彼はさっきまでホストをやってた感じは一切ない。






飛んできたボールは私の足元で止まった。






「はい。」




「あ。じゃん♪」






私がボールを拾い差し出すとクロちゃんはいつもの笑顔に戻った。






。何やってんの?」




「ん?ぁ。部室で着替えようかなって思って。」






「ぇ〜似合うのにもったいね。」っとしゃがみ込んで笑うクロちゃん。






「クロちゃんは文化祭回らないの?」




「あ?あぁ。あんま好きじゃないしなぁ。」




「そうなの?てっきりナンパしまくってるのかと・・・」




「ひっでぇ。だって俺は一筋だから♪♪」

































なんでそんなに簡単に一筋とか言えちゃうの?




なんで兄妹なのにそんな風に言えるの?








なんで・・・?
















なんで好きになっちゃったのかなぁ?























「・・・じゃぁ、クロちゃんは何してたの?」




「壁打ち♪」




「それは知ってるょ。なんで苦手な壁打ちしてるの?」












その時、今までニコニコしていたクロちゃんの表情が曇ったのを見逃さなかった。










「・・・俺ってボレー苦手じゃん。」




「うん。」




「最強ダブルスチームつっても、頑張ってるのは狐白ばっかり。」




「狐白に俺の尻拭いばっかやらせてるから。」








クロちゃんの顔は真剣でジョークじゃないって事はすぐわかる。
























「なーんつってね♪」









「・・・クロちゃんはがんばってるよ。」




「えっ?」







「クロちゃんが頑張ってるのは私が一番知ってる!ずっと見てきたもの!!」













そう。



クロちゃんは人目の付かない所でいつも努力してる。



出来の良い双子のシロちゃんといつも比べられて。



少しでも釣り合うように努力してるクロちゃんを私はいつも見てきた。




失敗しても笑って。



本当は泣きたい位悔しいのに。




















「辛かったら、泣きたかったら・・・泣いてよ。」






















私は好きだからクロちゃんを見てきたんじゃない。



見てきて好きになったんだ。






いつもの明るい彼も。



努力してる彼も。



悔しがってる彼も。






全部を見てきて好きになったんだ。




















「私がっ・・・一緒、に泣いって、あげるからぁ。」








涙が込み上げて来る。



私一人泣いちゃって馬鹿みたいだ。






あまり良く見えない視界の中にクロちゃんを探す。




すると突然私の目元を何かがなぞっていった。










「やっぱ人の涙ってショッペ。」




「クロ・・・ちゃん?」






先程より見やすくなった視界の真ん中にいる彼を凝視する。












「俺は大丈夫。」



































「俺の代わりに泣いてくれる人を知ってるから♪」











そう言って私の頭をポンポンと撫でてくれるクロちゃん。





そんなに優しい笑顔を向けられると一層涙が込み上げてくる。








「ひっ、く・・・っクロ、ちゃん。クロちゃん・・・」




「ん。何?」
































「・・・ダイスキっ。」












「うん。知ってる♪」












私の唇とクロちゃんの唇が軽く触れた。



ずっとずっと触れたかったもの。




やっと今、自分に素直になれた気がする。
















「・・・っ////」




「クロ・・・ちゃん?」




「・・・俺、今すっげぇ幸せ///」








柄にも無く顔を真っ赤にして言うクロちゃん。



こっちも恥ずかしくなってくる。








「・・・っ!私、着替えてくる!!」






「え〜っ」っと駄々をこねるクロちゃんを横目に部室に戻る。












「あ!〜!!」










部室に入ろうとドアを開け、テニスコートに目をやる。








































「花火ん時、もっかいキスしような!」




























「なっ・・・!バカぁ///」






そんな恥ずかしいことを大声で言い、手をひらひらと振るクロちゃん。












笑顔が可愛いお兄ちゃん。



私の大好きな人。








兄弟だって事なんてどうでもいいかなって思ってくる。





私はクロちゃんが好き。








それだけでいいじゃない。






このドキドキは本物なんだから。

















































FIN

部室ルートはクロちゃんでした。

ははは。

あまり冷たい目で見ないで下さい・・・。

ジンクスがまったく関係無いってことはモカが一番分かってます。。。













 

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