特に見に行きたいお店があるわけじゃないから、教室の片付けでもしようかな。





そう思い私は再びホストクラブに向かう。












廊下まできらびやかな装飾がされてある教室のドアを開けると誰かがソファーに座って本を読んでいた。





「・・・馨?皆と文化祭回らないの?」




「ん?・・・あぁか。」





その人物は我等の部長、五十嵐馨。




声をかけると馨は本から目を離し、私が入ってきたことにようやく気付いたようだ。








「彼奴等といたら煩くて敵わないからな。」





そう言うと馨は目を再び本に移した。





「何読んでるの?」




「洋書だ。読むか?」





本を覗き込むと訳の分からないアルファベットが列を成していた。





「・・・遠慮しときます。」





喉でククッと笑う馨。




馬鹿にされたみたいで悔しい。











「お前はいいのか?文化祭。」





本を読みながら聞いてくる。





どれだけ右脳と左脳を使ってるんだろう。





「うん。いいの。それより教室片付けようと思って。」




「へぇ。ご苦労なこった。」








本人が聞いたクセにあんまり私の話に興味がないと言ったような空返事をする。




・・・でも少し気にかけてくれてる事が嬉しかったりする。





「まぁ。少し休め。」





そう言って自分の座ってるソファーの隣に目をやる馨。








これは馨なりの気遣いだって知ってる。













私は馨の隣に腰を下ろした。






馨とふたりきりなんて滅多に無いから少し緊張する。




特に話す事は無いし。




現に隣では本の世界に入ってるから、話し掛けることすら出来ない。








沈黙に耐えきれず横目でチラッと馨を見る。




窓から射す光にキラキラと光るサラサラな髪。




前髪で少し陰る整った顔。











大袈裟かもしれないけど男の人でこんなに綺麗な人はいないと思うくらい馨は綺麗。























「・・・何だよ。さっきから人の顔ジロジロ見やがって。」





気付いてないと思ってたから突然声を掛けられ驚いた。






「な、何でもない!!」





私は立ち上がり、馨から離れようとした。





だって見とれてたってバレたらやだもん。











「おい。いきなり立つな!」








しかし馨に腕を掴まれ、勢いよく再びソファーに座らされた。





「!・・・?」





何で戻されたのか分からないまま馨を見つめる。




馨は一切表情を変えないまま口を開いた。














「・・・お前、無理してんじゃねぇよ。」





掴まれた腕に馨の力が伝わってくる。








「どうせ文化祭の準備とかであんまり休んでねぇんだろ。」





































「今は片付けなんてどうでもいいから休め。」





















私の腕から手を放し、頭をポンポンと軽く撫でる馨の手。














不思議なほど安心する。












馨は我が侭で強情だけど立派な部長だと思う。




一切皆には言わないけど、かなり部員のことを大切に思ってくれてる。







ちょっとした周りの変化にだってすぐに気付くし、人の事なのに一人で勝手に解決してしまう。














馨は一人で何でも出来ちゃうから・・・










































気が付いたときにはソファーに横になっていた。




いつ記憶が飛んだかすら覚えてないから、どのくらい寝ていたのかすら分からない。








とりあえず上半身を起こす。




疲れが少し抜けた体はさっきより軽くなった気がした。








窓の外はもう日が沈みかけて空は暗くなっている。




教室内に馨の姿を探すがこんな時間に居るわけもない。





グラウンドの方がガヤガヤしてるのは、もうすぐ後夜祭が始まるから。





きっと馨も後夜祭に行っちゃったんだろう。















置いていかれたと思うと無性に寂しくなった。













すると教室のドアが勢いよく開いた。




ドアの開く音に驚き振り向くとそこには馨が立っていた。








「馨?なんで・・・此処にいるの?」




「は。寝ボケてんのか?此処は学校だぜ。」




「そうじゃなくって・・・後夜祭行かないの?」








そう聞くと馨は逆手でドアを閉めた。








「お前は行かなくていいのか?」








私の質問に答えず、逆に質問してくる馨。








「・・・ん。今は此処にいたいかな。」








純粋に思ったことを言う。




今いる教室が物凄い居心地良い。




町の灯りが綺麗で、風が熱った体を冷ましてくれる。











すると馨は突然教室の電気を消した。





さっきまで頭を出してた夕日は完全に沈んで教室は漆黒に色を替えた。








「・・・馨?」








私は立ち上がり闇の中に馨を探す。




かろうじて分かる外は星で一杯だ。


















「きゃぁ!!」








驚いたも当たり前。




馨が私の腰に手を回し窓の近くに誘導する。








「馨・・・どうしたの?」








質問するが答えてくれない。



















その時。



















ドーン













空には大きな花が咲いた。








「・・・綺麗。」








後夜祭のクライマックス。


花火の時間だから電気を消してくれたんだ。








「馨。ありがとっ・・・」





私は馨にお礼を言おうと振り向いたら・・・




















突然キスされた。

















離れようとしない唇。




軽く押し返そうとしても馨の力に適うわけない。







息が苦しくて少し口を開くとその隙に馨の舌が入ってきた。




やらしく絡み合う舌。




舌を噛んだら逃げられる。







でもそうしなかったのは私も馨を求めてるから。











その間に何回花火が上がったんだろう?




私にはそれほど長く感じた。




ようやく唇が離れると銀色の糸が私と馨を繋ぐ。







私が崩れ落ちずに済んだのは馨がしっかり支えてくれているから。





一生懸命呼吸をしている私に顔色一つ変えない馨が話し掛ける。








「肺活量ねぇな。」




「っ・・・レギュラーと一、緒に・・・しないで。」








馨は私を軽々と持ち上げ窓枠のところに座らせる。




私と馨の目線の高さが一緒になった。








真っ直ぐに見つめてくる馨。




馨の瞳に花火が移り込みキラキラと輝く。








「俺はジンクスなんて信じねぇ。」








私の頬に手を添え、涙目になった私の目を軽く擦る。














「・・・が、たまには信じてみるのもいいかもしれねぇな。」









































「俺と付き合え。」















ドックンドックンと心臓が脈打つ。







馨の目が綺麗なのに怖く感じるのは吸い込まれてしまいそうだから。




馨の目が怖いのに反らせられないのは瞳があまりにも綺麗だから。








「・・・順番がおかしいよ。」

























「告白してからキスしてよ。」








私の顔が赤いのはきっと馨には分からないだろう。




でも、この言葉の意味はわかったはず。








いつものように余裕な顔で口の片端を上げて微笑んでるから。








もう一度唇を重ねる。




でも今度は軽く触れるだけのキス。








そのとき花火の締めくくり。




一際大きな花火が上がった。








グランドから拍手が沸きあがる。




その拍手は私たちを祝福してるかのような錯覚にさせる。








「あ〜・・・花火終わっちゃったぁ。」








再び黒く染まった教室から名残惜しそうに空を見上げる。




さっきの花火が空に残ったかのように星が瞬いてる。








「また来年見りゃいいじゃねぇか。」








馨が教室の電気をつける。




あまりにも眩しくていつもより多く瞬きをする。





「来年も・・・一緒に?」





やっと慣れてきた視界の中の馨を見つめる。




馨はまた私を持ち上げ、





「当たり前だ。」





っと言った。















「早く着替えて帰るぞ。そろそろ馬鹿共も・・・」





「たっだいまぁ〜♪」





私を下ろすとタイミング良く雄くんが教室に入ってきた。





「何や自分ら此処におったんか?」




「うん。こっから花火見てたの。」




さん探したんですよ。」




「ふぇ・・・何で?」




「皆で見ようと思っててさ。」(←誰かが抜け駆けしないように。)




「そなの?ごめんね。」




「見てたんならいいじゃねぇか。」




「一人で見てたのか?」




「うぅん。馨と一緒に・・・」














そう言った途端。




皆の視線が馨に注がれる。











「ま、まさかと思うが。馨・・・?」




「姫さんになんか・・・」










すると馨は振り返って。



























余裕の表情をかまし鼻で笑った。

















「うっそ〜!〜!!」




「そんな冗談はきついって!」








「冗談じゃ、ない・・・かな?」





「ショックや!姫さんが汚れてまう!!」




「うわ〜ん!さん!!目を覚まして下さい!!!」




。まだ遅くないよ!」












「おめぇら・・・いい加減にしろ。」(怒りMAX)








「はぁ・・・。(どぅにかして欲しい・・・。)」














時計の針が7時を指すと、部員の悲鳴と共に最終下校の放送が流れた。























































FIN

っはい。てなわけで『お片づけ』Ver.は馨くんでした。

どんどんジンクスが関係なくなってきてるぅぅぅぅぅ。。。。.....


この話で分かることは、徹くんは物分りが良いっということだけです。




 

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