こんな怪奇現象を目の当たりにして誰もが冷静でいられるわけが無い。 きっと私達は今、同じことを思っているはず。 悪い夢なら覚めてくれと…。 ようやく体育館を抜け出した私達はグラウンドに抜ける場所を探すため校舎内を歩き回る。 一歩踏み出す度軋む廊下はこの建物が木造建築だということを意味する。 「…やけに静かだな。」 「まぁ、夜やからね。」 「オレ、眠くなってきたよぅ…。」 「俺も。」 「先輩…旅館に着くまで我慢してください。」 「ほら。虎黒も我慢する。」 「…。大丈夫か?」 「あ。…うん。大丈夫だよ。」 私を心配する徹くんに無理矢理作った笑顔を向ける。 徹くんはそんな私を見て、ただ一言「無理すんな。」と言ってまた歩きだした。 …正直今もの凄く辛い。 突然こんなことがあって大丈夫なわけがない。 今だって何が何だか分からず頭の中は混乱してる。 でもそれは皆同じこと。 私一人、疲れたなんて言ってられない。 窓がとても大きくて、月明かりがたくさん入り込む。 校舎内には電気が通って無いみたいだが月明かりで十分見渡せるほど明るい。 私達は重い足を一歩一歩踏みだしここからの脱出を試みる。 しかし、もう随分歩いたというのにも関わらず一向に出口が見つかる様子はない。 ただずっと一本道の廊下が続く。 その先は闇でどれほど長いのか分からない。 「…なぁ。俺達いつまで歩いてんだ?」 「結構歩いたはずなんですけどねぇ。」 「もぅ歩き疲れたよ。。。」 「…気付いたか狐白。」 「あぁ。やっと確信が持てたよ。」 「何なにぃ〜?」 「何や?二人して何が分かったゆうねん??」 「…私達、同じ場所を歩いてる。」 「そういうことだ。」 「何それぇ!!どういう意味!?」 今、私達は廊下に職員室という札が掛かった教室の前に立っている。 …実際ここを通るのはこれで三回目。 今まで出口に向かっていると思っていた皆はショックを隠しきれない。 「で…でも、何でなんだ?」 「そうだよ!曲がり角なんて無かったじゃん!!」 「…俺達は此処から出られないってことか?」 徹くんの発した言葉に皆が静まり返る。 窓の外は葉っぱが高く飛び回る。 それは再び風が強くなったってことを意味する。 風が強い時は今まで何かが起きていた。 嫌な予感がする。 「とりあえず歩き続けるしかないんじゃないかなぁ。」 シロちゃんの言葉に肩を落とし一歩足を踏み出す。 逃げて!! 「っ何か来るみたい!!」 また声が聞こえた。 ここまできたらこの人の言うことに従うしかない。 私に出来ることは皆に聞こえたことを伝えるしかない。 「えぇっ!!次は何なのぉ!?」 「シッ…雄静かに。」 皆が耳を澄ませる。 聞こえるのは外の風のざわめき。 そして不気味な笑い声。 「…虎黒。変な笑い方すんなや…。」 「俺じゃ…ねぇよ。」 その声は次第に大きくなる。 「チッ…来るぞ!」 「…はいっ!!」 真っ暗な廊下の向こうから徐々に何かが近づいてくる。 接近するにつれて、その正体が月明かりに照らされ露わになった。 「っ…!!」 私はその姿を見て思わず声を押し殺した。 多分私だけじゃない、皆もそうだったと思う。 目の前には下半身の無く上半身が浮いている。 体は骨と皮だけみたいに細い。 人間と言うよりむしろ猿人みたいだ。 何より右肩に担がれた鎌が嫌に輝いて見えた。 「…やばくね。」 「俺も同感だ。」 相手が少しずつ近寄る度、私達も後ずさる。 顔は髪で隠れて見えないが髪の合間から微かに見える口元はつり上がってる。 …笑ってる。 どうすればいい? 怖いっ。 「皆!走るんや!!」 春くんが叫ぶと同時に私の体が宙に浮いた。 「きゃっ!!」 「マジで走るからしっかり掴まっとき。」 春くんが私を肩に担ぐと皆一斉に走り始めた。 「…ごめんねっ。」 春くんに聞こえない位小さな声で言った。 今の私に出来ることは春くんに後ろの状況を伝える事しかない。 私の視界には皆の姿が無い。 春くんより前を走っているんだろう。 後ろの妖怪は不気味な笑みを浮かべながら高速で追い掛けてくる。 いくら足の速い春くんでも、今は私を担いでるだけあってあまり加速できない。 私達と妖怪の距離は少しずつ縮まっていく。 「…っ道が分かれてんぞ!!」 「はぁ!?」 「さっきまで一方通行だったのにぃ〜!」 「ゴチャゴチャ言ってる暇はねぇ!」 「何人かに分かれて逃げよう!!」 「っ…わかりました!!」 後ろの妖怪は大きな鎌を振り上げた。 「行くで!!」 春くんがそう言うと急に門を曲がった。 私は遠心力で落とされそうになるのを必死に堪えた。 妖怪は… そのまま真っ直ぐ走っていくのが見えた。 「…春くん。もう行ったみたい。」 私が後ろの状況を伝えると、春くんはスピードを下げて空き教室に入り込んだ。 ドアを閉めると同時に私を抱き締め座り込む。 「っ…ほんま、よかったぁ。。。」 春くんの呼吸はかなり乱れている。 今日の練習終わった後でもこんなに辛そうじゃなかった。 「ご…ごめんなさい。」 「…何で姫さんが謝るん?」 「だって…私がいなかったら春くんはもっと楽に走れた…。」 私がいなかったら皆ともはぐれる事もなかった。 「何言うてんねん。」 「が無事ならそれでいいんよ♪」 そう言うと春くんはいつもの笑顔で私の頭を撫でてくれた。 皆がバラバラになった以上知恵を出し合う事も力を貸し合う事も出来ない。 外の風は止み、また静かな時が流れる。 今この状態でまた何かに遭遇したらと思うと寒気がする。 今この状態で皆の身に何かが起こると思うと怖くなる。 私はもう二度と風が吹かない事をただただ強く願った。 -----あとがき----- テケテケの登場です。 私の頭の中には映画の『学校の怪談』のテケテケしか知らないので宙に浮いている設定にしました。 春くんがおいしいです。 というか一人一人の見せ場を作りたいと思っています。 なので好きなキャラが出てくるまで待っててください♪ 怪談シリーズは1話1話が長いので更新するまで時間がかかります。 すみませんっ・・・。 |
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