春くんと二人になってしまった。



二人っきりがどうこう問題なのではない。









…こんな状況だからだ。













何時さっきのが再び襲ってくるかわからない。



今、バラバラになるなんて危険な事。
















早く皆を探さなくては。











だからと言って、探すために表を歩くなんて危険な行為。












…一体どうすれば。。。








































「…あっ!!春くん!携帯は??」



「そうや!」






春くんはポケットから携帯を取り出す。



携帯を急いで開くと、暗い教室にディスプレイの明かりが灯った。






眩しくって二人揃って少し目配せをする。



慣れた目でもう一度ディスプレイに目をやった。

































「…なんや、これ。」






「っ…!?」










春くんがそう言うのも無理はない。






携帯のディスプレイは真っ黒で、



真ん中には赤い文字で現在の時刻。










4時44分と書かれてあるのだから。

























「…しかも繋がらへん。電波はあるんに…。」





私は急いで自分の腕時計に目を移す。






「…4時44分だ。」






たしかに針は4時44分を示している。









偶然にしては気味が悪い。



このまま時計を見つめる。







「…春くん。これ…。」






秒針はチクタクと通常通りに時を刻んでいく。









しかし、秒針が何周しても一向に他の針は動こうとしない。










「時計も呪われとるんか…?」



「…わからない。」







この時計が何を示してるのかは分からない。



しかし、これから良いことが起こる気は全くしない。













「…行こか。皆を探さなっ。」










春くんは立ち上がって教室のドアに手をかけた。



携帯が使えないんじゃ自分の足で皆を探すしかない。






















だからと言って、容易く廊下に出たらまたさっきのに出会すかもしれない。












足が竦む。













みんなを探さなきゃ。












でも怖い。



































「…。」






春くんは私の手を握った。






体温が手を通して直に伝わる。



















「大丈夫。俺がついとるから。」















そう言った春くんの笑顔がやけに眩しかった。









怖いんだろうけど、なんだか楽しそうでもある笑顔。







そんな笑顔に私はいつも勇気づけられているんだ。



















「…ありがとう。行こう。」










私は教室のドアに手をかけた。



































プルルルル…

















「「…っ!?」」






繋がっている手に力が入る。







ドアを開けようとすると同時に、さっき使用不可能だった春くんの携帯電話が着信を知らせた。










折り畳まれた携帯をゆっくり開く。





















そこには赤い字でメリーと書かれてある。









一体誰なのか?






春くんは通話ボタンを押し、携帯を耳元に近づけた。










「…もしもし。」







しばらく沈黙が流れる。



私は携帯の裏から自分の耳を近づけた。


































『…ったしメリー。今、学校の目の前にいるの。』
















そう言うとブツッと音を立てて切れた。










「なに…今の??」



「…わからへん。」













自分をメリーと名乗った少女の声。















…今、学校目の前??
















プルルルル…








考える隙を与えず、また携帯が鳴った。







春くんは何も言わず携帯を耳に近づけた。














『…あたしメリー。今廊下にいるの。』
















またそれだけ言い、携帯が切れた。







「メリーって…誰なんや??」







春くんは携帯を見つめながら言った。



それでも立て続けに携帯はメリーさんからの電話を着信する。


































『あたしメリー。今教室の目の前にいるの。』












「っ…!!」
















窓から見える外は、突然風が吹き荒れて木々がざわめいた。




嫌な予感がする。










































プルルルル…










無情にも携帯は次の着信を伝える。






















「春くん…私が出てもいいかな??」










無意識に繋がっている手に力が籠もる



春くんは何も言わずに携帯を差し出した。








「…もしもし。」






『あたしメリー。』
















































「『…今、あなたの後ろにいるの。』」



































「えっ…??」




「っ!!」












私は手を引っ張られ、春くんの後ろに回された。



目の前には春くんの大きな背中しか見えない。


















手は痛いほど強く握られている。































何があったの…?













私は恐る恐る春くんの背中から覗きこんだ。












「っ…!!」
















一瞬にして鳥肌が立った。









それもそのはず。


















さっき私が立っていた位置に、ボロボロのお人形が立っているのだから。



















恐る恐る通話中の携帯電話に再び耳を近付ける。











































『…やっと見つけた。。』


































「やっ…!!」






私は急いで携帯を閉じた。



















怖いっ。





!危ない!!」







春くんの呼ぶ声で現実に帰る。



すると私目掛けて木製の椅子が飛んできた。













怖くて体が動かないっ…。








私は固く目を瞑った。






それしか出来なかった。











































バキッ






















私の耳元で椅子が壊れる鈍い音が聞こえた。






痛く…ない。































「おい!大丈夫かっ!?」






さん!お怪我は無いですか??」













聞き覚えのある声が聞こえる。



私は恐る恐る目を開いた。

























「徹くん…コタぁ。。。」










そこには大破した椅子を足蹴にしている徹くんと、私の高さまで目線を合わせて心配そうな顔の小太郎がいた。













「…ほんま助かったわ。」







「それより…何なんだよコレっ。」










再会を喜んでいる暇は無い。






徹くんがそう言うのも当たり前。

























目の前には教室の机や椅子が浮いているのだから。
















「春!小太郎!!の周りをしっかり守れ!」









「はいっ!!」



「っ…そっちは任せたで。」










コタが私の肩を抱き、自分に引き寄せる。






その反対側を春くんが警戒する。























「っ徹くん!!」










徹くんは私達より前に立っていた。





























「…ざけんな。クソ人形。」












それだけを言うと、構えの姿勢を取った。











































には触れさせねぇ。」






















すると、所構わず教室の物が飛んできた。






バキッバキッっと鈍い音を立てて徹くんは飛んでくる物を壊していく。



















さん!破片が飛んでくるので気を付けて下さい!!」







コタと春くんは破片から私を守るように壁になってる。










「っ徹くん!徹くん!!」













「ちょっ!危ないやろ!!」












強いからと言って、戦っている徹くんを独りにしたくない。



そんな私を春くんは抱きしめて制止させる。







そんな間も徹くんは机や椅子を壊していく。






徹くんの手や足からには血が滲んでいた。
















人形は一切その場所を動かない。









でも顔はうっすら笑っている気がした。









































「もぅ…嫌だよっ。。。」










何でこんなことになったのか。



そんなことより、皆が傷付くのを見てることしかできない

























自分は…無力だ。




















悔しさのあまり目の前が涙で滲む。











涙は私の頬を通じてスローモーションのように地面に落ちていった。







そのとき、それは月明かりに照らされてキラキラ輝いて見えた。



































すると宙に浮いていた物は突然糸が切れたかのようにドサドサと音を立てて地面に次々と落ちていった。













私達はその不可思議なことをただ目を丸くして見ていた。













急いで視線を人形に移す。













人形は徐々に闇の中へ溶けるように消えていった。























その時、人形に睨まれた気がした。








































「…なんやったんや?」



「…なんだったんでしょう??」











「おい…?大丈夫か??」










徹くんは私の元に近寄り、座り込んだ。










「…っ!!徹くん手は!?大丈夫???」







そんな徹くんの手を取った。






指には切り傷がたくさん付いており、所々血が滲んでいたり、痣ができていたりしている。






私はそんな手を見て、より一層涙がこみ上げてきた。













「ご…っごめんな、さい。。。」



「何泣いてんだよ!?」










「だっ…だって…」






















すると徹くんは傷ついた手で私の頭を撫でてくれた。










「自分のせいだとか思うな。は悪くない。」










「そうや。はなんも悪いことしてへんで。」






「…いつものように笑って下さい。」
















「…ありがとう。」

























私は励まされてばっかりだ。






私も皆の力になりたい。












その為には、この状態を真っ向から受け止めなくては。













皆で揃って帰らなきゃ!














目標ができた今、さっきより強気に前向きに行ける気がする。





































大きな窓から外を眺めた。






吹き荒れていた風はとっくに止み、何も無かったかのように穏やかだ。













空は相変わらず満点の星空。









































月はさっきより少し欠けている気がした。















































雰囲気ぶち壊しコメント。





徹くんがめちゃくちゃ強いことが明らかになりました。
徹くんのおでこの傷は小さい頃に空手,居合い,少林寺,柔道,剣道etc.どれかで付けた傷です。
真面目にトレーニングする子なのでどれも有段者です。

っとまぁ何でここで徹くんの解説を入れなきゃいけないんだろ??


メリーさんの電話っというのを昔テレビで見て、忘れられないので使いました。
皆さん。お人形は大切にしましょうねっ!!

意味深な感じで終わりたかったのに中途半端に…。




<2006,7,11>



















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