外は相変わらず真っ暗で、夜が明ける気配すら感じない。
でも、変わったことだってある。
今ここには、春くん、徹くん、コタ、クロちゃん、雄くんがいる。
そして、ケサランパサランという心強い味方がいる!!
もうすぐで皆が集まる。
そしたら、ここから出る方法を相談しよう。
皆がいればきっと大丈夫だから。
「…あ!そいえば!!」
廊下を歩いていると、雄くんが何かを思い出したのか、大声をだした。
皆は思わず足を止めた。
「突然、大声出すなよ…。」
「…ビックリしました。」
「何だよ雄。」
「オレ、馨とシロに会ったよ!!」
「なんや、そんなことかい…って」
「「「「えぇぇぇっ!!!」」」」
「みんなシーッ!」
皆の声に驚いたのか、先頭にいたケサランパサランは猛スピードで私に飛びついてきた。
私の言葉に皆は慌てて口を押さえた。
「…なんで、そんな重要な事言わないんだよ。」
「えへへぇ。忘れてたぁ。」
「忘れとったって、自分…。」
「まぁいいじゃないですか。これで無事、皆さん集まるんですから。」
「雄くん。馨達は何処であったの??」
「たまたま図書室前で会って…怪奇現象の記事を探してるから、オレは皆を探してこいってぇ。」
「なら、図書室に行きゃあいいんだな。」
「ですね。」
私達は図書室を目指して歩き始めた。
…しかし、どこが図書室なのかもわからい。
あてもなくさまよっていると、私達は昇降口らしい広場に出た。
そこには木製の靴箱が使われいたときのまま放置されている。
風化したのか虫に喰われたのか、靴箱はボロボロに崩れている。
「…外に通じてますね。」
昇降口のドアは壊れていて、風に運ばれて大量の落ち葉が吹き込んでくる。
…風!?
先頭に居るケサランパサランは全身の毛を逆立てた。
「…おい、あれ誰だ?」
徹くんの見ている方に視線を移す。
さっきまで私達が眺めていた昇降口の入り口にいつの間にか、人が立っていた。
「…女の人だな。」
逆光の為、シルエットしか見えないが、見たところの雰囲気は女性みたいだ。
「学校のセンセイとかかなぁ??」
…しかし、この学校は既に廃校になっている。
何よりも…嫌な予感がする。
「ったし…キ…?」
女の人は何か呟きながら一歩一歩、私達に近づいてくる。
皆は私を囲むように一歩づつ後ずさった。
ふとケサランパサランを見ると、その場で威嚇している。
…が、怯えているようにも見えた。
怖いのに無理して私達を守ろうとしている?
「!!っちょ、っ!!!」
私は考えるよりも体が先に動いていた。
皆の間を縫うように走り、ケサランパサランの元へ向かった。
女の人がケサランパサランに手を伸ばした…とほぼ同時に、私はケサランパサランを抱き寄せた。
私の腕に収まったケサランパサランは、やはり小刻みに震えている。
しかし目の前には、ケサランパサランも怯えるほどの女性が立っている。
女の人は真っ黒の長いコートに身を包み、真っ黒い髪は腰より長く伸びている。
しかし、顔には黒とは対照的な真っ白な大きなマスクをしている。
「…」
この人も私の名前を知っている。
…しかし、この声は儚げで、
「の、顔が…欲しい」
そう言うと、ゆっくり私に手を伸ばしてきた。
私は目をギュッと固く瞑った。
「おい。お前、に何しやがる。」
すると突然、耳元に聞き覚えのある声と共に、肩に手を置かれた。
この偉そうな口調は独りしかいない。
「馨…?」
すると、馨は何も言わずに私の頭をポンポンと撫でた。
「私…綺麗?」
女の人は細々とした声で言った。
「あぁ。綺麗だ。」
「…こんな、顔でも?」
すると、女の人は顔にしていた大きなマスクを外した。
私は思わず、息を飲んだ。
女性の口は、唇の端が切れていて、頬まで裂けていた。
腕の中のケサランパサランもより一層震えた。
しかし、一番至近距離にいる馨は微動だにしないで彼女を見つめている。
「…女はどんな姿であっても、美しい。」
馨は自分の手を、女性の頬に伸ばした。
「だから自信を持て。」
相変わらずの上から口調。
でも優しさを含んでいる。
その気持ちが伝わったのか、女性は静かに涙を流した。
「これ、雄に貰ったんだが俺は喰わないからやるよ。」
馨はズボンのポケットから一粒のべっこう飴を取り出した。
合宿所に行くバス内で雄くんが皆に配っていたやつだ。
すると、女の人はそれにゆっくりと手を伸ばし、受け取った。
「…ありがとう」
ギリギリ聞き取れるくらいの小さい声でそう言うと、その場からゆっくりと消えていった。
その顔は、優しく朗らかだった。
「…キザやな。」
「キザー。」
「キザぁ♪」
「うるせぇ!!」
春くんが口を開くと、いつもの雰囲気が蘇る。
そんなやりとりを見ていると思わず顔が綻んでしまう。
すると、馨とバッチリ目が合った。
「…何笑ってやがる。」
「うぅん。何でもないよ。」
そう答えると、馨は不服そうに小さく舌打ちをした。
「…この毛玉なんだ?」
私の腕の中に気づいたのか、眉間にシワを寄せて見下した。
「ケサランパサランっていうんだよぉ。」
雄くんが馨の背中からひょっこり顔を覗かせた。
当のケサランパサランは、緊張が溶けたせいか眠りに付いてしまった。
「を助けてくれたんだぜ。こいつ。」
馨は興味無さそうに返事をすると、ケサランパサランを優しく撫でた。
「…本当にいたんだな。」
「えっ?」
「何でもねぇ。」
馨の言葉が理解出来なかった。
「おい。狐白は?」
「此処にいる。」
すると、馨はドアに手をかけた。
「これで皆さん集まりましたね。」
「そうだな。」
「早くこんなとこ出ようぜっ!」
「…そやな。体がもたんわ。」
「オレも眠いしぃ。。。」
皆の素直な気持ち。
なのに馨は何も言わなかった。
「…おら。さっさと入れ。」
馨は皆を図書室に押し込んだ。
「馨っ!さっきは助けてくれてありがとう!!」
「…あたりめぇだろ。」
そう言うと優しく笑った。
雰囲気ぶち壊しコメント
口裂け女さんです。
口裂け女さんは可哀想なイメージしかありません。
綺麗になりたくて手術したのに…ね。
怖がらない男の子にべっこう飴を貰ったことから、べっこう飴を渡すと消えてくれるそう
です。
そして余談ですが、口裂け女さんは足がめちゃくちゃ速いらしく、一般人は走って逃げら
れないらしいです。
…昔、兄ちゃんと計算したところ、逃げ切れるのは剣心だけですよ。るろけん。
あと、ケサランパサラン!!
ケサランパサランは人型の霊に対しては苦手という、勝手な設定にさせて貰いました。
だから、実体化してない霊魂や植物は大丈夫です。
そして馨はたらしです。
育ちがいいので、ヨイショなんてお手のものです!!
彼にかかれば、女性を褒めるなんてお茶の子さいさいです。
生まれながら天性のホスト気質です。
<2007,3,28>
|